【書評】『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』メイソン・カリー ルーティーンが偉業を作る、というのは異論の余地もありません。ではクリエイティブな業種の偉人たちのそれは具体的にどういうものだったのか? 欧米を中心に古今東西の芸術家や学者たちの日課がずらり161人分! ニューヨーカーである著者自身の人気ブログを加筆してまとめたこの本は、丁寧な調査と軽妙な読み心地を備えた楽しい読み物です。このいい意味での「軽さ」を書評の形式に反映してみました。 天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々 単行本著者 : メイソン・カリー翻訳 : 金原 瑞人, 石田 文子価格 : ¥1,980ISBN-10 : 4845914336ISBN-13 : 978-4845914333出版社 : フィルムアート社発売日 : 2014/12/15 ※価格は変動している場合があります。 ① 真似をしてみる 『変身』のフランツ・カフカが恋人への手紙に綴った一日のスケジュールより。 七時半から十分間、窓を開けて裸で運動。(中略)朝六時まで書いたこともある。そのあとまた裸になって窓辺で運動 暑かったの? わたしもやってみる。カーテンは閉めた。カフカも閉めてたならいいんだけど ② 孤独をエネルギーに キルケゴールのエネルギーの源はコーヒーだった キルケゴールの秘書を務めたイスラエル・レヴィンによると、キルケゴールは「少なくとも五十種類のコーヒーカップをもっていたが、どれも一客ずつしかなかった」 ③ 目次を読む もう何度目の挑戦だろう。目次を読み通すなんて絶対に無理。一六一人分、だいたい二ページずつの天才の日課たちが、紙面っていう格子窓から手を伸ばして、通り過ぎようとするわたしをひっつかむ。映画監督のフェデリコ・フェリーニ? 読む。啓蒙思想のヴォルテール? 読む。現代音楽家スティーヴ・ライヒのお隣は小説家のニコルソン・ベイカーですか? 読む。ジョイス、プルースト、ベケットの文豪トリオ? 読む。ナボコフの次がバルテュスなのは「ロリータ」繋がり? 読む。ちょっと待って、まさか、カルト映画作家デイヴィッド・リンチを飛ばしちゃってた? 戻って読む。時間切れ。今日も目次を読み終えられない。 ④ ついに 著者による「はじめに」に気がつく。 この本のなかで、私がもっとも関心を寄せているのは、私自身が日々悩んでいる問題、つまり、意味のある創造的な仕事をしながら生計を立てるには、どうしたらよいかという問題だ(中略)すばらしい成功を収めた多くの人々が、同じ問題に直面したことを、実例として紹介するように努めた。 生計と創造的な仕事とルーティン。つまりは生活、生活、生活! 世知辛えなぁ。 ⑤ ドナルドとヘレンの場合 バーセルミはある大学の文芸誌の編集の仕事をやめ、小説を書くことに専念した。ヘレンは教師の職のほかに小さな広告会社を経営していて、夫婦はその収入で生活していた。バーセルミが作家として新たな一歩を踏み出した日、二人はそれぞれ一日のスケジュールを決め、それを週七日、毎日守ることにした。バーセルミはそれ以降、生涯を通じて、ほぼその通りのスケジュールに従った。 ⑥ ジェインとカサンドラの場合 ジェイン・オースティンは一度も一人暮らしをしたことがなく、毎日の生活のなかで一人になれる時間もほとんどなかった(中略)オースティンが執筆していたのは居間で、彼女の甥の回想によると「つねにあらゆる邪魔が入った」(中略)かたわらで母や姉が静かに縫い物をしていることも多かった。もし来客があれば、原稿を隠し、自分も縫い物を始める(中略)家族はオースティンの仕事を尊重し、姉のカサンドラは家事の大半を担ってくれた。 ⑦ わが身を振り返る(振り返らない) ⑧ 隣の本も手に取る 続編は『天才たちの日課 女性編 自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常』。草間彌生、ココ・シャネル、ヴァージニア・ウルフ、スーザン・ソンタグ、ダイアン・アーバス、ミランダ・ジュライ?! こっちも目次を読み通すのなんてぜったい無理! 天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々 Kindle版著者 : メイソン・カリー翻訳 : 金原 瑞人, 石田 文子価格 : ¥1,466ASIN : B01M70KAK0出版社 : フィルムアート社発売日 : 2014/12/15 ※価格は変動している場合があります。 天才たちの日課 女性編 自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常 単行本著者 : メイソン・カリー翻訳 : 金原 瑞人, 石田 文子価格 : ¥1,980ISBN-10 : 4845916371ISBN-13 : 978-4845916375出版社 : フィルムアート社発売日 : 2019/9/26 ※価格は変動している場合があります。 他の書評 投稿ナビゲーション 【書評】『乾いた人びと』グラシリアノ・ハーモス【書評】『あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集』